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■リヤカーに関する法律について

リヤカーをめぐる法律、条例、規制などについて整理し、考えてみたいと思います。

現状、クロネコヤマトさんを筆頭に、リヤカーによる配送業務は一般化しつつあります。

物流という、重要な社会インフラの一端を担っている、と言っていいでしょう。

とくに、交通も建物も密集した都市部においては、ときに自動車を上回る機動性と配送効率を発揮しています。

さらには、化石燃料を使わない、というエコ&省エネ的観点からも、いっそうの導入が見込まれます。

そう、すでに「なくてはならない」という水準に達しているのです。

ところが、リヤカー+自転車、というものを「車両」としてとらえた時、適用される法律というのが、わかりにくいのが現状です。

法律が作られた時期が古すぎて現代の交通事情にマッチしていなかったり、おおまかすぎて解釈に困ったり、というのが主な理由です。

お客様の中でも、とくに配送業務で使いたい方からのご質問を多く受けています。

 

そのような現状を鑑み、ごくごく基本的なところからひとつずつ考えていきたいと思います。

■まず、リヤカーの定義とは?

驚いたことに、道路交通法には「リヤカーとは何か」という定義の記載がありません。

ですので、社会通念上「これはリヤカーだろう」というものを指す、としか言いようがない、ということになります。

当社の製品をもとに定義させてもらうならば、「箱状の荷台に取手(引き手)がついて、人力または自転車で牽引するもの」ということになるかと思います。

そして、ほぼ同じ構造で人を乗せるための「人力車」は区別されていますので、「人を乗せるものではない」ことになります。

 

道路交通法では「軽車両」に分類され、単体でも自転車とセットでも車道の左側を通行しなければなりません。

ここは基本中の基本です。

また、道路標識も「軽車両」の指示に従うことになります。

幹線道路の高架などは「自転車・リヤカー不可」という標識が掲げられていることがありますので、注意が必要です。

■自転車でリヤカーを牽引する場合:その1「どこを走るか」

一般的な自転車は、軽車両の中の「自転車」、さらにその中の「普通自転車」という扱いになります。

自転車通行可、と標識にある場合、この「普通自転車」を指します。

これが自転車にリヤカーを接続した場合、「普通自転車」ではなくなり、「自転車」というカテゴリになります。

普通自転車ではなくなりますので、一般的な歩道はもちろん「自転車通行可」の歩道も「自転車通行帯」も走れません。

又、リヤカー牽引している自転車を押して歩いても歩行者とはならない為、上記同様通行できません。御注意下さい。


車道左端、路側帯などが通行できる場所となります。

 

■自転車でリヤカーを牽引する場合:その2「適用される制限」

道路交通法はもともとおおまかな法律で、それを実際運用するために各都道府県それぞれに「道路交通規則」というものが設けられています。

リヤカーに関する記載ももちろんあり、それが都道府県ごとに異なっています。

一般的に、交通の往来の激しい都道府県のほうが厳しい傾向にあります。

 

東京都を例にとってみます。

 

<第10条「軽車両の乗車又は積載の制限」>

 

(2) 積載物の重量の制限は、次のとおりとする。

ア 積載装置を備える自転車にあつては30キログラムを、リヤカーをけん引する場合におけるそのけん引されるリヤカーについては120キログラムを、それぞれこえないこと。

 

つまり、自転車でリヤカーを牽引すること自体は問題なく、ただし重量はリヤカー本体+積載物の合計で120kgまで、ということです。

実際、ヤマト運輸さんをはじめたくさんの業者さんが運用しています。

120kgというのは、電動アシストつき自転車の能力を考えると、ちょっと控えめかなと思います。

ただ、安全面を考えると、このへんが妥当なのかもしれません。

 

<第11条「自動車以外の車両のけん引制限」>

法第60条の規定により、自動車以外の車両(トロリーバスを除く。)の運転者は、交通のひんぱんな道路においては、他の車両をけん引してはならない。ただし、二輪の原動機付自転車又は自転車によりリヤカー1台をけん引するときは、この限りでない。

 

「交通のひんぱんな道路においては」とありますが、東京都で交通のひんぱんでない道路などほとんど存在しません。

つまり、事実上東京都ではリヤカー以外のものは自転車で牽引できないのです。

ちなみに、これは大阪も福岡も宮城も同様です。

■人は乗せていいのか?

これは非常に悩ましい問題です。

なぜなら、それに関するはっきりした記載がなかったからです。

しかし、ヒントはあります。

 

1.東京では「自転車タクシー」は認められていない

2.リヤカーは人を乗せるものではない、と定義されている(人力車との関係)

3.自転車が牽引できるのはリヤカーのみ

 

上記の1.2.3.を総合すると、はっきりとした記載はないものの、「人を乗せてはいけない」と判断せざるを得ません。

グレーではあるものの、警察の判断で「黒」と言われても文句は言えないというわけです。

現在、国内各メーカーは、人を乗せるためのものはつくっていません。

じつは、以前試作したことがあるのですが、上記のような事情を踏まえて断念しました。

楽天などのネットショップでも、キッズトレーラーと言われる「子供乗せ自転車用トレーラー」が販売されています。

ただし、公道では使用できません。自転車が牽引できるのは、荷物を運ぶためのリヤカーだけだからです。

じつは、サイクリングロード=自転車専用道路もアウトです。トレーラーを引いたら「普通自転車」ではなくなるからです。

多くの販売元は、このことを記載していますが、していないところもあります。

 

公道を走れないものを公然と販売するのはどうか、という意見もあるかと思います。ただ、キッズトレーラーは自転車の二人乗り三人乗りよりはうかに安定性があり、安全ということもできます。

これから認められていくべきアイテムかもしれません。

 

ちなみに欧米では、子供を乗せるのはトレーラー、二人乗りは危険だ、という認識です。

■まとめ

1.リヤカー単体は「軽車両」、普通自転車+リヤカーは「自転車」、従う標識は「軽車両」

2.運行できるのは車道左端、路側帯

3.自転車+リヤカーを押して歩く場合でも歩行者扱いにならない為、歩道NG

4.自転車+リヤカーの場合、けん引できる重量は120kg(リヤカーの重量込み)

5.人は乗せてはいけない

 

現状はこのようなことになっています。

配送などに関しては特に問題はありません。積載オーバーだけ注意すれば大丈夫でしょう。

法律などの整備については、これから進んでいくものと思われます。

まず、東京では、リヤカーで配送を行う業者について、一定の基準(社員の安全教育など)を満たしたものには「認定」という形でお墨付きを与える方向です。

おそらく、他の都道府県にも波及していくと思われます。

 

「社会に必要なモノ」として、現代の交通事情にあわせた法が整備されていくのはいいことだと思います。

リヤカー、大変優れた輸送アイテムです。

これをどう安全に運用していくか、議論が進んでいくのを期待しています!